りんこうや

少々年季の入った自転車乗りの独り言

俺の自転車スタイル:社会人

俺は、大学を卒業後、普通の企業に入社した。なんとか足の骨折は、脚を引きずることない程度には回復したが、顔の傷はまだ少し残っていた。が、それでも採用してくれた会社にとっては、貴重な戦力だったのだろう。

バブル経済の影響だろうか。

俺は、営業に配属になった。顔に傷作ってもスポーツに励んだ体育会というキャラ設定で、先輩に引きずり回された。

営業だけあって、客先との接待が多かった。兵隊係の俺は、当然、毎日毎晩接待漬け、しかも、怪我の影響で自転車にも乗れない日々が続いたので、体重は激増してしまった。

ようやく本格的にトレーニングを再開できたのは、梅雨明けの時期だ。弟や義理従兄に、全くついていけない。筋力を戻し、心肺機能を戻し、身体を戻し、勘を戻すのに、いったいどれくらい時間がかかるんだ。

何度目かのチーム練の時、俺は泣いた。義理従兄や弟は、すぐに戻る、と言ってくれた。だが、俺はわかっていた。そう簡単には戻らない。6ヶ月のブランクはとても大きい。しかも、4月からは酒浸りだ。これからも、営業職を続けていけば、酒漬けになるのは間違いない。

姉に相談をした。姉は、一晩中何も言わず、俺の泣き言を聞いてくれた。そして俺がひとしきり話し終わると、レース後にしてくれたように、俺を抱きしめてくれた。

姉が、布団で寝ようと言い出した。子供のころみたいに、布団を並べて寝ようと。子供のころ、俺らは子供部屋で一緒に寝ていた。いつ以来だろう、姉と一緒に寝るのは。布団に入ると、俺ら姉弟には約束事があった。姉がいつも聞くのだ、明日の目標は、と。その日も同じだった。俺は答えた。そして、いつものように姉が言った。オーケー、と。