りんこうや

少々年季の入った自転車乗りの独り言

俺の自転車スタイル:ロードレースチーム

俺ら姉弟チームのエースは俺ではなかった。弟だった。弟はオールラウンダー。俺は、どちらかというとクライミングが得意だが、スプリント力はあまりない。

姉弟チームは、そんなに数は多くないものの、草レースに出ていた。当時は、もちろんチーム力ということもあったが、ほとんど個人出場の選手ばかりだった。そんな中、俺が曳いて、弟を発射させるという作戦は、草レース程度のレベルでは効果てきめんだった。

何度か優勝することができた。レースが終わると、姉は決まって俺ら兄弟を抱きしめた。姉ちゃん、恥ずかしいよ~、と言いながらも、姉コンの俺は嬉しかった。

弟が入学を決めた大学にはサイクリング部はあったのだが、ツーリング主体の活動で、弟がやりたいロードレースは、興味ある個人が個人の資格でやっているだけだった。弟は結局サイクリング部には入部せず、姉弟チームの選手としてロードレースを続けることになった。 

そんな矢先の俺の事故だった。姉は、チームのマネージャーとして優秀だ。新たに選手を加えたのだ。ただ、姉弟チームなので、第三者が加入しても居心地が悪いのは間違いない。姉は、賢かった。親戚を引っ張ってきた。親戚、といっても、兄弟の親戚ではない。姉の父方の従兄だ。俺ら兄弟から見ると、とても遠い関係なのだが、全く赤の他人、というわけではない。彼はもともと、高校まで野球をやっていた。あと2勝で甲子園というところまで行ったのだが、わずかに届かなかった。1番センターで、運動神経はバツグン。高校を卒業すると企業のノンプロチームで野球を続けていたが、先ごろ引退してその企業のサラリーマンになった。そこを、姉が引っ張ってきた。

彼は、完全なクライマー。野球選手と言っても長身細身で足が速く、自転車でもすいすい坂を登って行った。

俺は身長180センチ、弟は185センチ、義理従兄に至っては188センチ。きわめて大型選手がそろったチームが出来上がった。姉もモデルをやっているだけあって女性にしては背が高く、自称170センチ。草レースで出会う連中からは、ノッポーズと呼ばれた。

義理従兄はノンプロの野球チームでキャプテンを務めていただけあって、リーダーシップがあった。それ以降、姉弟チームは義理従兄を中心に回っていった。

少し先の話になるが、もう1人選手が加入した。俺のライバルであり友でもあり命の恩人でもある、彼だ。弟はすでに俺よりもはるか上のレベルの選手に成長しており、友の加入で弟は大いに刺激を受けた。友は大学卒業後、多くの仲間がそうであるように一般企業に就職した。自転車選手としての道は歩まず、俺らのチームに入って草レースを楽しむライダーになった。だが、彼が海外遠征で身に着けたノウハウや、彼の大学の自転車競技部のトレーニング方法などを俺の弟に伝授してくれた。エースは弟のままだった。

友は、俺の事故以来、姉や弟と親しくなっていた。親戚ではないが、居心地悪いということはなかった。完全に余談になるが、友は、かなり遠いが、数年後、俺らの親戚になることになった。義理従兄の妹、つまり俺らの義理従妹にあたる女性と結婚することになったからだ。