俺の自転車スタイル:大学サイクリング部入部
俺は、1980年代、大学生だった頃から自転車をはじめた。もともと、中学高校では別のスポーツをしていたのだが、膝と足首を痛めた。大学でスポーツするなら体育会でと思っていたのだが、その怪我のために高校3年生以降自分で満足できるプレーができなくなり、大学では通用しないだろうと感じていた。
高校生の分際で、という話もあるが、都道府県代表まであと一歩というところまで登ったチームの選手だ、自分の実力くらいわかる。怪我自体は完治したのだが、また同じところを痛めるのではないかという恐怖心に勝てなかったのだ。これでは、大学で体育会に入っても満足なプレーなんてできやしない。
大学のキャンパスをブラブラしていて目に留まったのが、自転車部だった。正確には、サイクリング部だ。
サイクリングという語感からして、楽な部なのかと思った。怪我したとはいえ、体力や運動神経には自信があった。が、甘かった。
ロード班、MTB班、サイクリング班に分かれていた。掛け持ちする連中もいた。俺は、サイクリング班に身を置いたが、サイクリングという語感からは異なる世界だった。ランドナーを改造したパスハンターを駆り、ほとんど廃道と化した旧道の峠を探しては走る回る連中の集まりがサイクリング班だった。
自分は体力に自信があると宣言したら、体験入部で、とある廃道に連れていかれた。ハイキングコースなんて生易しいものではなかった。
なぜ、自転車担いで登山する?おかしいだろ。登山というか、本気のハイカーですら来ないような山道を、なんでこの連中は自転車担いで行くんだ?
パスハンター?なんじゃそりゃ?峠の狩人?
何かがおかしい。旧国道〇〇号線って、ちょっと待てよ、その「旧」って?何年か前にバイパスできたから旧道になったんじゃなくて、昭和30年代とかで遺棄されたから旧国道って、「旧」国道じゃなくて、廃道じゃないか?
それは、大学キャンパスから1日かかる場所、帰ってきたら日付が変わる寸前だった。そのまま部室で寝た。
そして翌朝、俺は入部届に署名した。